四季と建物

建物は、皆様のお住まいなのですから、出来るだけ快適に過ごしたいものです。
そのためには、日本の環境に対応したものでなければいけません。

前に挙げた「結露」(高温高湿・低温低湿)の環境も一つなのですが、
1年で大きく変わる「四季」の要素も十分に考慮させていなければなりません。

昔から「建物は夏を旨とすべし」という言葉が物語っているように、日本においての夏は
それだけ過酷であったことを感じられます。
今のように空調機器もなかった時代であっても、冬は暖を取る方法がありましたが、
夏にはどうしても自然の力(風力)のみの環境であったのでそう言われてきたのでしょう。

そもそも、「四季」はなぜ生まれてくるのか?
もし、四季がなく一年中気温が一定でしたらここまで建物に関して色々悩むことはなかったでしょう。
ずっと暑い地域でしたら、暑い地域に対応した建物。
ずっと寒い地域でしたら、寒い地域に対応した建物。
これだけを考えればよいのですから・・・

四季が生まれる理由は、宇宙から考えなければなりません。
地球は、楕円形をしていますよね。そして、一日に一回転していますよね。
(地球が一回周るのを1日と定めてあるので、一日に一回転と言う表現はおかしいかもしれませんが・・・)

さらに、太陽の周りを回るのに365日=1年かかる事も、皆様ご周知のとおりです。

そして、四季が発生する大きな理由が、地球の傾きです。
地球の地軸は、わずかにですが、傾いていることも、皆様ご存知だと思います。
この小さな傾きこそが、四季の大きな原因になるのです。
とても模式的な図で申し訳ございませんが、
地軸の傾きによって、夏に当たる太陽の光と
冬に当たる太陽の光の角度には差が発生
します。

もちろん、赤道直下の当たりでは、その角度
の差がほとんどないので一年中暑く、
北極や南極では、角度が非常に低いので
太陽の熱のパワーが届かずに一年中寒い
のです。

北半球と南半球で四季が逆転するのも
この「地軸」の影響のためです。
次は、実際に太陽の光が地表に届いた時の
影響なのですが、夏には太陽高度が非常に
高くなります。
(夏至の南中時の太陽高度=78度)
そのため、太陽の光の当たる面積が
小さくなります。


そのため、太陽の熱のパワーが地表にたくさん集まり、暑くなっていきます。

冬の場合は、当時の太陽の南中高度は30度であるため、地表には広く太陽の熱が届き、
暖まりにくくなります。
ちょっと角度が変わっただけで、熱の量が大幅に変わるのですから、太陽の力はすごいものです。

今までは、地表について述べてきましたが、実際に建物を建てた場合、
壁に太陽の光が当たれば、壁が温まってきます。
するとそこで蓄えられた熱が、家の中に潜熱として入ってくる場合もあります。

と言うことは、つまり、壁の配置にも気をつけないといけないということを指します。

まず、夏の壁ですが、朝太陽が昇ってくると東面の壁に強い直射日光を当てます。
まだ、太陽高度が低いので、地面にはたいした熱が入りませんが、東面の壁と太陽光線の角度は高く、地面よりも多くの熱が
壁には当たっているのです。
しかし、朝は地表が一番冷たい時期ですので、そう暑くは感じません。
昼くらいになると、太陽が南のほうに向き、地面を強烈に照らします。
しかし、南面の壁にはあまり大きな熱が加えられません。
上の建物の図を見ると分かるかもしれませんが、太陽光線と地表の角度は約78度。
と言うことは、南面の壁と太陽光線の角度は約12度になるため、太陽の熱は大きな面積に拡散されるのです。
そして、夕方になると、朝と同じ角度で今度は西面の壁に強い熱を与えます。
このとき、東面と西面に与えられる熱の量はほぼ同じなのですが、「夏の西日」と言われる位に西の熱のほうが
暑く感じます。
それは、昼、強い光線で温められた地表の熱が夕方になって地面から発散されだすことが原因になるのです。
太陽からの熱と地表からの熱が合わさってくるので余計に熱く感じることになります。

次に、春と秋ですが、春と秋の太陽の動きはほとんど同じです。
この時期に感じる熱の量は、どの壁面においても大きな差が生じることはありません。
もちろん、一番熱が多く当たるのは地表にはなりますが、生活に支障を与えるような強い熱にはならないと思っても良いでしょう。
これは、私たちが、春・秋は快適な季節だ、と思うことから想像すればそう難しいことではないと思います。

最後に、冬の壁ですが、冬の場合、南中時の地表に対する太陽高度は30度です。
つまり、南中時の南面の壁に対する太陽光線の角度は60度になります。

これは、何を意味するかと言いますと、冬には、地表より南面の壁のほうが暖まるということを指します。

以上の事より、夏の強い日差しを避け、冬の暖かい日差しを取り入れたいと思うと思いますが、
その場合には、建物の大きさは東西に長くするのが有効と言うことが分かると思います。
そして、南面には、落葉樹を植えることにより、夏は強い光をさえぎり、冬には暖かい光を取り入れる
ことが出来るようになるでしょう。

現在の建築技術では、断熱性・空調設備などが非常に発展していますので、
これらのことをあまり考慮しなくても快適な生活をすごすことが出来る建物を建てることは可能になってきています。
しかし、やはり私たち・・・特にこのような四季に富んだ場所に住んでいるのですから、
少しでも四季を感じられるような快適な住居に住んでいきたいと思いはしないでしょうか?